全くもってこんな立場はやっていられない。
元妻だと境界がぶれすぎる。
単に年下の妹みたいな預かりものだと言い聞かせていても、ふとしたことで境界が一瞬で吹っ飛ぶ。
いつも通り大学から家へ送っているとき、赤信号で止まっているときに涼は思い出した。
「そういえば、瞬がおまえの携帯電話を知りたがっていた」
考えもなしにふと口に出た。
もしかしたらいくら保護者にすぎないと公言していても、後ろめたい気分があったのかもしれない。
他の女と寝たということに。
涼は赤信号を見ながらそう思った。
「瞬?
そう?」
興味無さそうな声だった。
綺樹がそれ以上言わなかったから、涼も話を続けなかった。

