The side of Paradise ”最後に奪う者”


「でもフランクだし。
 質問すれば、丁寧に教えてくれるし。
 更にわからなければ、わかるように噛み砕いて懇切丁寧に。
 ノートに図を描いてあげたりして。
 時々、おまえわざとわからない振りしているだろう、と突っ込みたくなる学生もいる」

「ぜっていわざとだ」


高木はおかしそうに笑った。


「そういえばお礼にランチをおごられていたな」

「なんだって?」

「学生相手に妬くなよー。
 おかげで頼んでいる仕事がますますはかどらない。
 かといって残ってやらせようとすると、ぎゃんぎゃんと煩い男がいるし。
 一応言っておくが、この間はリスク管理で男子学生と二人でやらせていたのに、学生のほうが彼女の約束に間に合わなくなって、帰ったんだからな。
 一人でやらせないよ」

「ええ、ええ、そんなことだと思っていました。
 でも、二度は無いですよ」

「わかってるよ」

にこやかな口調とは裏腹に、涼の笑っていない目がひたりと見据えられるのに、高木は笑った。