The side of Paradise ”最後に奪う者”


「また変なことに巻き込まれてるな」


涼は空いている椅子に座った。


「適当にあしらえばいいのにな」

「あの性格じゃ、できないんだろ」


高木はマウスを動かした。


「市川は人気者だよ。
 学部の就職担当が来て、ダバリードみたいな会社の就職状況を聞いたり、国際留学課が来て留学がらみで向こうの大学の様子を聞いたり。
 あ、あの語学の堪能さで、この間アラブの学生の通訳をしていた。
 嫌って言わないから、こっちの仕事がたまるんだよなあ。
 困っちゃうよな」

「って、それ契約内容違反でしょ。
 先輩、止めてくださいよ」

「だって、おれ、あちこちに恩を売っておきたいもん」


この先輩に任せた自分が馬鹿だったかもしれない。