*        

仕事中に携帯が震えるのに見ると、珍しく瞬からの電話だった。

彼が就職してから、初めてじゃないだろうか。


「葉山の時はありがとう」


自分で言いながら、あの時の思い出に胸が痛んだ。


「まあ、貸しだからね」


不敵に笑っている。


「ミズウルゴイティは、しばらく来ないんだろ?
 久々に破目外さないか?」


ウルゴイティでは無くなったとも、また戻って来ているとも言えない。


「ああ、そうだな」


涼は目を閉じた。

大学の書庫でのことを思い出す。

このあたりで息抜きをしないと、本当に襲いそうだ。