The side of Paradise ”最後に奪う者”


涼は荒っぽく本を抜き出した。

血迷った。

本当は声をかけて、脅すだけのつもりだった。

でも。

目の前に、伸びかかった栗色の髪の毛が、窓から入るほのかな灯りで、光るうなじにかかるのを見て。

一瞬、完全に理性が飛んだ。

ここまでなんとか押さえてきたのに。

情けない。

と、いうか危ない。

距離をとっても、時々綺樹に対して凄く欲情している。

くそう、動物か。

いや哺乳類動物だが。

あほらしく自分に突っ込んでいると本が落ちる音がして、涼は振り返った。

書架に並んだ書籍のすきま越しに綺樹の姿を見る。

目を見開いて空中を見つめ、ぼんやりとしていた。

やっぱり、まだまだか。

がっかりしたと同時に、ほっとする。

まだ日本において置ける。