「苦労、したのね。
ちゃんと身になっている。
私と付き合っていた頃より、ずっといい男になったわ」
「苦労」
呟やきながら、グラスを手に取った。
苦労ってもんじゃない。
地獄の底を這いずり回っている。
いまだに。
ふっと落ち着いた微笑をした。
ただ、それでやっと一つだけわかったことがある。
綺樹とは、どちらかが死ぬまで、関わりが切れることはないだろう。
因果が深い。
それだけはわかった。
二人で幸せになれることがあるのか。
ずっと這いずり回っているだけなのか。
「苦労って言うなら、西園寺のほうがずっと苦労だ」
思わずため息が出た。

