The side of Paradise ”最後に奪う者”


   *


「そうだ。
 おまえのマンション、残しておいて丁度良かった」


朝食の席で思い出したように言われて、綺樹の手は止まった。


「マンション?」


嫌な予感がする。


「ああ。
 以前、ダバリードの仕事で日本に滞在していた時に使っていたマンション」

「売らなかったの?」


売ってくれてよかったのに。

あんな嫌な思い出しかない場所。


「やるといわれて、もらえるもんでもないだろ。
 あんないい物件は一度手を離すと、そうそうに戻らないしな。
 定期的に掃除も入れている。
 すぐに住めるぞ」


あそこに住めというのか。


「綺樹?」


またあそこに住むのか。


「綺樹」


強い口調で呼ばれて我に返る。