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「そうだ。
おまえのマンション、残しておいて丁度良かった」
朝食の席で思い出したように言われて、綺樹の手は止まった。
「マンション?」
嫌な予感がする。
「ああ。
以前、ダバリードの仕事で日本に滞在していた時に使っていたマンション」
「売らなかったの?」
売ってくれてよかったのに。
あんな嫌な思い出しかない場所。
「やるといわれて、もらえるもんでもないだろ。
あんないい物件は一度手を離すと、そうそうに戻らないしな。
定期的に掃除も入れている。
すぐに住めるぞ」
あそこに住めというのか。
「綺樹?」
またあそこに住むのか。
「綺樹」
強い口調で呼ばれて我に返る。

