「ああ、全く、とっとと帰れ」
小さく毒づいて涼は浴室に入った。
冷たいシャワーを頭からかぶりながら、両手を壁につく。
禊ぎだ。
段階と言って、日本で一人暮らしをさせるのは、建前だった。
このままでは自分が綺樹を殺してしまう。
距離を置かないと。
この日々は永遠には続かない。
綺樹をさやかさんに返す日は来る。
返さないと。
涼は顔を上げてシャワーの粒を受け止める。
綺樹の大部分は仕事から出来ている。
しかもダバリードならではの魅惑的な仕事で。
綺樹がこちらの幸せを考えて行動したように、今度は自分が綺樹の幸せを考えなくては。
彼女らしい人生。
まずはとにかく、綺樹の状態を戻す。
めんどくさい色々な感情はその後に考える。
返したくないとか、やり直したいとか、外に出したくないとか。
そういうのは後回しだ。
涼はシャワーの水をお湯に変えた。

