熱のせいなのか少しぼんやりとした眼差しに、顔色はいつもよりも更に白く、対照的にくちびるが口紅を塗ったように紅い。

風邪のせいなのか、心臓が悪いせいなのか、雰囲気が弱っていて隙だらけだった。

やばい。


「着替えてくるから、食べてろよ」


涼は慌てて部屋を出ると自分のウォーキングクローゼットに入った。

これは予想外だった。

考えてみたら、寝てはいけない状況など、今まで無かった。

背広を脱ぎ、セーターを頭から被る。

なんとなく一つ深呼吸してから綺樹の使っている寝室に戻ると、まだアイスを持ったまま固まっていた。


「食ってろよ。
 ほら淵のほうは溶けてずぶずぶじゃないか。
 おれのと代えてやる」


取ろうとすると少し綺樹がひいた。