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熱は続いた。

大抵は一日でひくのに、今回はなかなか微熱が下がらない。

流石に会社には連れて行けず、西園寺で寝たきりだった。


「登社拒否じゃないですか」


成介はさらりと言った。


「朝になると、お腹が痛くなるのと同じです」

「熱は朝だけじゃなくて一日中だ」

「じゃあ、お疲れですね。
 ずっと走り続けてきているんですから」


涼は何も言えなかった。

帰りにふと思いついて路面店のチョコレートショップに寄った。


「綺樹。
 帰ったぞ」


ベットスタンドしか灯りがついていない部屋は薄暗かった。

締め切っている部屋は生暖かく、綺樹の使っているボディークリームの匂いが、いつもより甘ったるく漂っていた。