「全く、ボケてても傍若無人ぶりは健在だな」


愚痴ってから笑って綺樹の髪の毛をかき回した。


「さあ行くぞ」


涼の背中が遠ざかっていくのを綺樹はしばし見てから、ふらつきながら追い出した。

エレベーターホールで追いつく。

涼はちらりと後ろにいる綺樹を見下ろした。


「カルガモの親になった気分だよ」


何の反応もない。


「早く、そこで言い返してくれるようになってくれるとな。
 いいんだけど」


涼は呟いた。

怒り、愚痴り、それでも気分が明るいのに涼自身、気が付いていた。

こうやって西園寺の屋敷に二人で帰ることが嬉しい。