溜まっていく湯をみつめる。
ここで自分も切り離したらどうなるんだろうか。
ふと残酷なことを思ってしまう。
何に自分が腹を立てて、そういう考えになるのかわからなかった。
ああ、そうか。
あの議場の時、フェリックスを選んだことが自分はまだ面白くないのだ。
今ここで自分も切り離したら、綺樹はずっとあのままだろう。
その方があいつは幸せじゃないか?
自分だって。
他の男に取られるんじゃないかなどと、キリキリとした嫉妬で狂わなくて済む。
綺樹は専用の病院で、静かに暮らせる。
生きながら、死んだまま。
涼は湯をほとばしらせていた蛇口を力いっぱい閉めた。
たゆたっている水面を見つめる。
その方が、綺樹も。
幸せなのではないだろうか。

