顔がこちらを向いていたから、誰か入ってきたかわかっているはずだった。 でも無反応だった。 涼は歩み寄って頭に手を置いた。 「大丈夫か?」 何の返答も無いのに涼はため息をついた。 脱ぐのを忘れていたトレンチコートを脱ぎ、背広の上も脱ぎ、ネクタイも外すと、ほっとして綺樹の傍らに 腰をかけた。 綺樹の前髪に指を滑らせる。 「風呂は? ためてやろうか」 相変わらず返答が無いので、涼は立ち上がって湯を張りに行った。 参った。 どうすりゃいいんだ、あれは。