The side of Paradise ”最後に奪う者”


   *

10日かかった。

明日、アメリカを発つという連絡が、さやかから入った。

西園寺の屋敷に入れることは正直気が重かった。

あの過去がある場所では、綺樹が辛いだろうと思ったからだ。

だが日中、自分が居ない時には、なるべく人目が多いほうがいい。

夜遅くに戻ると玄関で執事の藤原が出迎えてくれた。


「綺樹様はお部屋でお休みに」


涼は階段の上を見上げる。


「夕食は食べたか?」

「お部屋にお運びしましたが、手はつけていらっしゃらないようです」

「ありがとう。
 今夜はもう下がっていいよ」


涼はそのまま綺樹の部屋に向かった。

ノックして開ける。

綺樹はベッドの上で丸まるように横になっていた。