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10日かかった。
明日、アメリカを発つという連絡が、さやかから入った。
西園寺の屋敷に入れることは正直気が重かった。
あの過去がある場所では、綺樹が辛いだろうと思ったからだ。
だが日中、自分が居ない時には、なるべく人目が多いほうがいい。
夜遅くに戻ると玄関で執事の藤原が出迎えてくれた。
「綺樹様はお部屋でお休みに」
涼は階段の上を見上げる。
「夕食は食べたか?」
「お部屋にお運びしましたが、手はつけていらっしゃらないようです」
「ありがとう。
今夜はもう下がっていいよ」
涼はそのまま綺樹の部屋に向かった。
ノックして開ける。
綺樹はベッドの上で丸まるように横になっていた。

