「チャンスを無駄にするな」 囁き声で言い捨てると、足音高く出て行った。 ドアの閉まる音が響く。 再び静まり返った沈黙が、ゆうらりと部屋に満ちる。 何も変わらないまま、空気が微かに動いた。 ふっと一粒だけ、滴が綺樹の鼻筋を伝う。 その動きだった。