「私は。 おまえを幸せへ導く者になろうと」 幸せにするのではなくて。 見つめる綺樹の瞳が揺らいだ気がした。 フェリックスは立ち上がった。 長居をしたくなかった。 危険だ。 自分の妻が、どこまで見抜いているかわからない。 綺樹が大麻を使っているのを知っていながら、見て見ぬ振りをしていたこと。 そして、その件をリークしたこと。 だがこの件の致命的な失敗は、綺樹の精神がここまで傾いていたことに、気が付かなかったことだ。 ここ数年、距離がありすぎた。 だけど絶好の機会だったのだ。