* ふっと部屋の空気にエゴイストの香りが混じった。 それでも綺樹の表情は変わらなかった。 一人掛けの椅子に投げ出されたように座っている。 フェリックスはドアの所に立ち止まったまま、しばらく見つめていた。 「下がっていい」 横に控えていた使用人へ少し顔を向け、告げる。 二人きりになると、フェリックスはゆっくりと歩み寄り、椅子を綺樹の前に引き寄せて座った。 表情も変わらなかったし、視線も動かなかった。 「おまえは」 フェリックスは言葉を詰まらせた。