なんだか凄く疲れたな。
綺樹は目の前がかすむのに瞬きを繰り返した。
こんなに廊下は長かったっけ。
「綺樹さま、こちらです」
秘書のグレースが後ろから抱えるようにして支え、地下駐車場へ促した。
さやかが用意してくれた車に倒れこむように入る。
ああ、疲れた。
やっと役目が終わった。
座席に横たわり目を閉じた時、急に啓示を得た。
そうか。
日本で死ななかったのはこのためか。
さやかのためにこの事件を対応するためか。
神はさやかがお気に入りだもんな。
綺樹は目を閉じたまま微笑した。
じゃあ、今があの時に決めたことを“する”時だ。

