綺樹は自分の役割が終わったのに、ボストンに戻るため、執務室で残務処理を進めていた。
グレースが血相を変えて飛び込んでくる。
「綺樹様」
手にしていた三流紙を読み進めるに従って、顔から血の気が引いていくのがわかる。
上流階級に巣食っているマリファナの誘惑とかなんとか題名がついていた。
医者が治療のためということで処方していた、という事実の記事だった。
病院内でマリファナパーティも秘密裏に行われていたと書いてある。
それは知らないが病室で吸えるのは事実だったし、連日通っていたのも事実だ。
綺樹の名前も出ていた。
「さやかにアポとって。
10分後ぐらいに」
そう言うと口の中に血の味が広がった。
乾いた唇が切れたらしい。
警察には捕まらない。
心臓に持病があるし、その治療だといえば裁判は乗り切れてしまう。
でも、終わった。

