でもその度に思う。
前に進む必要はあるのだろうか。
あの時決めたんだし。
ここに戻ってきた時に“する”ことを。
それを見通しているのか、監視するように、さやかもフェリックスも頻繁に電話をくれた。
知らされずに、ボディーガードが影でついているのに気が付いていた。
NYにいる兄の尚希はしょっちゅう訪ねてきた。
成介さえ電話をくれた。
涼は普通の様子で、少し真面目になったと言っていた。
からかったり、ばかなことを言わなくなったと。
見合いに対しても以前より拒否反応を見せなくなったので、頃合をみて嵌めてみますと言っていた。
綺樹は画策した当事者ではなく、他人事のように相槌を打った。
よかったね、とまで言った。

