The side of Paradise ”最後に奪う者”


季節がすっかりと移り、見慣れないほど景色が変わっていた。

勉強はもの凄く遅れをとっていた。

とりかえさないと。

そう思って毎朝、玄関まで下りてドアをあける。

その度にすっかりと紅葉しきった街路樹が葉を殆ど落とし、夏服では寒くて出られないのに立ちすくみ、逃げるように部屋に戻る。

あの夏から季節が進んだことが受け入れづらかった。

息苦しいほどの湿度が高くて、セミが煩かった。

気が付くと始終、涼の腕の中にいて。

何も考えてはいけない。

綺樹は自分に言い聞かせた。

思い出さない。

じゃないと前にすすめない。