「私たちに最期なんてないのよ。 綺樹」 麻酔から醒めた後、極度の興奮状態だった精神の糸が切れたらしかった。 眠りに落ちていく。 自分を守るための逃避だった。 それから綺樹は誰に対しても、最低限の受け答えしかしなかった。 先にアメリカに戻っていると言ったさやかに対しても、うなずいて、ついていてくれてありがとうとだけ言った。 医者が飛行機に乗っても構わないという診断を下すと、誰にも告げずに一人でボストンに戻った。