「私が電話をかけたら、出てくれそう?
 それともおまえに伝言を頼んだ形のほうがいいのかな」

「直接かけてください。
 伝言形式にすると、こじれます」

「わかった」


そのまま切れた。

成介は執務室にいる涼を見つめる。

携帯が震えだしたのに、書類に目を落としたまま片手で場所を探っている。

液晶画面で誰からかわかると、明らかに時間が止まっていた。

ゆっくりと耳当てて、涼がこちらを向く。

目が合った。

綺樹が先にこっちと話したとは言わないはず。

二人とも譲らずひたりと視線を合わせていた。

今回は涼のほうが外して、席を立つと窓に向かってこちら側に背を向けた。