「あなた。
 大丈夫ですか」


最初の数語が飛び跳ねるように発音された後、いつもどおりに落ち着いた。


「ごめん。
 ちょっと、しくじった。
 涼はどんな様子?
 怒っているかな」

「暴走はしていませんよ。
 いま、どこにいるんですか?」

「病院」


言いたくないらしい。


「さやかは涼になんて説明したのかな。
 私が移った理由を」

「正直に言ってくれましたよ。
 涼から隠してと頼まれたと」


綺樹は小さく笑った。