The side of Paradise ”最後に奪う者”


   *

戻るなら、の限界が来ていた。

涼の健康状態も限界だ。

綺樹は戻らないことに決めた。

その夜、ソファーで夢と現の間を彷徨っている涼の寝顔を見つめた。

ごめんな。

触れられない手で頬を包む。

黒いくまが出来ている。

覚えていて欲しいと思ったこともあったけど、やっぱり。

早く忘れて。

全てを。

くちびるをあわせるようにしてから、最後に自分の容器に近づいた。

ご苦労さん。

中々良かったよ。

上に行こうとして、ぴりっと電気のようなものが走った。