「嘘だろ」
呟きに浮いている綺樹は顔を伏せた。
それから上を見上げた。
金色の穴。
その向こうには、見えなくても母親が待っているのがわかっていた。
肉体に戻ろうと思えばまだ戻れる。
でも踏ん切りはつかなかった。
そもそも涼と恋人の時間を過ごすと決めた時点で、アメリカに戻って“する”ことは決めてあったのだ。
もう“あとの時間”を繰り返すことに疲れていた。
涼と別れた後の時間。
「追っかけるぞ」
ぎょっとして視線を戻すと涼はさっきの姿勢のままだった。
聞き間違いか。
綺樹は不審げに涼を見下ろしていた。

