あそこまで戻ってやり直せたら、違う人生を送れるか。 涼と出会わない人生。 ばかばかしい。 綺樹は考えを振り払った。 涼が窓越しに警備員に挨拶をして駐車スペースに入れる。 エンジンが止まり、しんとした沈黙になった。 急がなくてはいけないのに、二人とも身動きをしなかった。 自分から行動を起さなくてはいけない。 綺樹はドアを開けようと手をかけた。 一つ息を吐いて、綺樹は涼へ体を返した。 「涼」 淡い瞳が見上げた。