玄関で最後に綺樹の肩を抱き寄せずにいられなかった。 このドアをくぐったら、もう戻れない。 現実だ。 くちびるを重ねて、その温かみも感触もむさぼりつくしておこうと思った。 二度と会えないわけではない。 それが涼の唯一の救いだった。