The side of Paradise ”最後に奪う者”


「どこかパーティで見かけたら声ぐらいかけてよ」


涼が微かに笑っている声で言った。


「ああいう無視のされ方は、もうごめんだ」

「かけるよ」

「時々、メールさせてよ」

「返事は期待するなよ」


涼の笑う息がうなじをくすぐった。


「電話も」

「出ないかもしれないけど」


同じように頼りなさげに言う。


「しょうがないな」


涼は苦笑と諦めが混ざった口調だった。


「ちょっと何かあったとき、誰かに伝えたくなる。
 それがあなたなんだ。
 一方通行でもいいさ。
 ある程度、気が済む」


綺樹は静かに目を閉じて顔を横に向け、涼の横顔にくちびるをつけた。