* ゆっくりと最後の朝が訪れようとしていた。 部屋を満たす闇が薄まっていく。 ベッドの上で涼は体を重ね、足を絡め、羽交い絞めにするように綺樹の両脇から腕を回していた。 「嘘でいい。 離れないと、どこにも行かないといって欲しい」 綺樹の耳元で搾り出すように呟いた。 「嘘でも?」 涼が泣いているんじゃないかと思って胸が痛くなる。 「行かないよ。 涼。 どこにも行かない。 ずっと側にいるよ」 言う方だって辛い。