The side of Paradise ”最後に奪う者”


  *

ゆっくりと最後の朝が訪れようとしていた。

部屋を満たす闇が薄まっていく。

ベッドの上で涼は体を重ね、足を絡め、羽交い絞めにするように綺樹の両脇から腕を回していた。


「嘘でいい。
 離れないと、どこにも行かないといって欲しい」 


綺樹の耳元で搾り出すように呟いた。


「嘘でも?」


涼が泣いているんじゃないかと思って胸が痛くなる。


「行かないよ。
 涼。
 どこにも行かない。
 ずっと側にいるよ」


言う方だって辛い。