「私が本気になりすぎるって、どこかで悟っていたから。
私の立場とおまえの立場を考えたら、うまくいかないってわかっていたのに。
いや。
せめて私が本気にならなければ、二人とも苦しまなかった」
綺樹は魚に小麦粉をまぶし始めた。
「そうかな。
僕は、絶対あなたを手に入れようとしたと思うけど。
それが犯罪でもね。
実際、やったしね」
苦く笑っているのは、綺樹のことを襲ったことを思い出しているのだろう。
「僕はどの道、苦しんだろう。
あなたが本気になろうともならなくとも。
宿命というのか運命というのか、良くわからないが、そういうのはある」
綺樹は優しく微笑み返した。

