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瞬とのやりとりから、借りなくてもよかったかもしれないと後悔していたが、車から降りた綺樹が建物を見
て、凄いな、と単純に驚いたのに、幾分か涼の気持ちは慰められた。

会社が建設会社だけに葉山の別荘は洒落た造りだった。

立地もいい。

ほぼプライベートビーチ的な砂浜に、3方がガラス張りの長方体が突き出ている形だった。

人目につかない立地だが、見られても構わないようにその部分はキッチンとダイニングになっていた。

プライベートのほうは一方が前面ガラス張りで海に面していたが、そこも人目にはつかず、海の方から望遠
鏡ででも覗かれなければ大丈夫だった。


「さすが三島建設だな」


道中で瞬に借りたことは話してあった。


「まあな」


涼は思い出したくない過去を少し思い出した。