「それとも。 私の父に取られたくなかったから、殺したの?」 平伏したままの治人の背中が微動する。 顔を上げて綺樹と静かに瞳をあわせた。 「いいえ」 風が二人の間に流れる。 治人の中には、どの理由とも違うものが見えた。 綺樹は首を傾げた。 「解放、したかったの?」 一瞬だけ驚いた顔をした。 「やはり血を引いていらっしゃいますね」 「見えるのはちょっとだけ」 綺樹は中途半端な能力に苦く笑った。