綺樹はなんの反応もせずに、ただ歩き続ける。
その内、一際、重々しさの漂う広間にたどりいた。
一段高い上座。
床の間には壷に大きく枝や花が投げ入れてあった。
屋敷の花を飾るのは、祥子おばさんの譲らぬ役目らしい。
ずっと昔から変わらず。
そう、母の時も。
歴代の長の写真が並んでいる鴨居を見上げる。
末端から2枚目はやはり異様だ。
白黒写真で、実際の髪の色も瞳の色もわからないとはいえ、顔立ちが日本人離れしている。
日本人の血が流れていないのだから当然か。
考えてみれば、私も母と同じ役割だったな。
次の正統な者への繋ぎの役割。
歴代と並んで飾ってあること事態、不思議だ。

