The side of Paradise ”最後に奪う者”


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北野の屋敷は西園寺と同じように広大だ。

こちらは純和風建築だが。

部屋にいるか、外出しているかだったが、屋敷の中を歩いてみる気になった。

昔ながらの和風建築だから部屋を仕切っているのは襖や障子だ。

50名とは言わないが、それ近くの人数が屋敷の中にいるはず。

なのに人の気配も、話し声もせず、静かだった。

ただセミがやかましい。

回廊のようになっている縁側を歩いていると、通り過ぎる部屋部屋には掛け軸や花が活けてあった。

そして置き人形のように時々、人がいる。

例外なく綺樹の顔を見ると、手をついて深く礼をした。