涼は綺樹の腕を掴んでトランクの蓋で死角位置に引きずり込んだ。
気が付いたらくちびるがあっていた。
「はい、ごちそうさま」
涼は腕を離すと綺樹のスーツケースをトランクの中から地面に降ろした。
やり返す気力も無く、綺樹はため息をついた。
「どういたしまして」
軽い方のボストンバックを持つと、門が開いて若い衆が出てきた。
「おかえりなさいませ」
特徴のある言い方とお辞儀の仕方をすると、涼にもお辞儀をしてスーツケースを運んでいく。
「じゃあな、ありがとう」
「電話する」
涼はもう一度言うと、綺樹は振り返りもせず手をひらひらと振って入っていった。

