涼は飲んでいたグラスをカウンターに下げた。
「感だよ、感。
そんな感じがするだけ」
「てっきり記憶でも戻ったかと思いました」
綺樹も無言でグラスに口をつけながら、隣に立った涼を探るように見上げている。
「お前から見てもそう見えるんだったら、あながち感は狂っていないということだな」
少し苦い気分でこたえた。
「そういうのは失われないんじゃないですか。
あなたは仕事でも、野生の感で動いていますからね。
立派なものです」
綺樹がくつくつと笑い出した。
「おまえは昔から感が良かったよ。
いつでも」
最後に含みを感じた。

