「いませんよ」 にべもなく言った。 遊んだ女の中にはいない。 執着したらその相手は遊び相手じゃないのだから。 その言葉のレトリックに涼は気が付かないようだった。 気が付くような男じゃないから、言葉を選んだ。 「暁子、か?」 成介はため息をついた。 「知りませんよ」 涼は無言のまま買ったばかりのCDを勝手にいれる。 迷いもなく一番最後まで曲を飛ばす。 柔らかく優しい、でも強い芯があり、どこか寂しいピアノの音。