「だからちょっと寝てから帰る。
先行ってて」
「わかった」
その返答に安心して完全に寝入ったらしく、意思のような空気が散った。
帰るとは言っていない。
凄く眠りが浅い性質のようなので、深く意識が沈むのを待ってから動く。
綺樹の寝顔が見える位置の、アームチェアに座った。
この夏、わざわざ日本に来たのは祥子叔母さんの件だけではあるまい。
大きな理由はやはりこの関係だろう。
涼は長く息を吐いた。
こっちだって結構辛い。
わかっていても別人だと思い込もうとしているところや、綻びそうになりながら友人関係に固持しているところとか。
記憶が戻ってなくたって同一人物なんだから、それ止めろよと何度も言いたくなる。

