「なにをです?」
「僕が付き合った女のこと」
涼は手術の後、自分のことを“おれ”とは言わなくなった。
「あなたが火遊びした相手は、両手両足の指の数では足りないほど知っていますが?」
涼に少し表情が戻り笑いをつくった。
「その中で執着した女はいたか?
だけど別れた女。
いや、ふられたのか。
裏切られたのか、勝手に去ったのか」
自分の中の感情を探り、迷うように言葉が途切れがちになる。
成介はどれも合っているように思った。
“彼女”において。
「知りません」
答えてから、少し考えて言い直した。
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