苦しい。
涼はよろめくように立ち上がると、出口へと歩き出した。
今までリリースしたアルバムが並んでいる。
引き寄せられるように1枚を手に取った。
“Falling in love, Again”
裏を返すと収録曲の一番下に居た。
“She”
係員に会計を頼みながら、一番端に並んでいるアルバムに気が付いた。
“Break out”
これは知っている。
手に取ったが、何も思い出さなかった。
忘れた過去に関わっていると思うのだが。
会計を終えた成介が涼の支払いを終えるのを待っていた。
そのまま無言で、成介の車を泊めている駐車場へ歩き出す。
成介の車の後ろにはチャイルドシートがあり、おもちゃや絵本が置いてある。
それを見るといつもは成介の娘、花蓮の話になるのだが、今夜は沈黙のままだった。
「何か知らないか?」
成介はしばらく無言だった。

