「だめ」
記憶が無いから、せめて綺樹と関係があったものを持っていたい。
そうしないと本当に繋がっているものが無い。
綺樹は自分の存在を気づかせないため、徹底的にやったから、西園寺の屋敷にもライナのところにも何も無い。
かろうじて自分が弁護士に残したものだけだ。
本当は結婚指輪をどうしたのかも聞きたかった。
「渡せない。
これは記憶がない分、その時にあなたといたという僕の存在証明だから」
「それ、まずくないか?」
綺樹の声が冷えた。
「友人関係だぞ。
それなのに、かつて恋人関係だったことを証明する物として身に着けていたいなんて」
涼は空になったグラスを置いた。

