「ジャズライブの予約をしているのですが、友人が駄目になったんです。
無駄にするよりはあなたを誘う方がいいので」
「おまえは本当にとげが多いな」
「そうですか?」
「で、友人は女か?」
にやっと笑った涼を冷たい視線で見返した。
「あなたと違います」
成介は涼の秘書だからこそ、多忙であり、仕事でもプライベートでも一緒に行動することは稀だった。
プライベートでは特にだ。
その夜は何も約束が無く、瞬に声をかけようかと思っていた位だったから、
成介の誘いに乗った。
日本人のジャズピアニストと黒人、白人のトリオらしい。
ジャズなど全くと言っていいほど聞かないのだが、ジャズピアニストの演奏は耳になじみやすかった。
スウィングポテトをつまみながら酒を飲む。たまにはこういう時間の過ごし方も悪くない。
そう思い、いい気分だったのはアンコールの演奏が始まるまでだった。

