「そんな人生、寂しくないか」
涼は綺樹の反抗心に火が着くよう、わざと言った。
でもタイミング的には綺樹を打ちのめした。
さっきのベッドの中でのことが思い出される。
「だったら」
綺樹は少し口をつぐんで普通の声で続けた。
「何かの折にダバリードの社章を見たときには、私という人間がいたことを思い出してくれ。
私はこの世の中に存在したことを何も残していけないから。
だから、そうしてくれる人が居たら、それで寂しい人生じゃなかったことになるさ」
最後のほうはカラリとした声だった。
涼の方がしばらく口が効けなかった。

