「いや、そうじゃなくて、ダバリード以外でもいくらでもいい引きがあるんじゃないの?」
苦笑いになる。
「こんな頭でっかち、どこが他に雇うんだよ。
机に向かっている分には優秀かもしれないが、対人となると使い物にならない。
今日の交渉でよく分かったろ?
今の地位に居るから確かに引きはある。
でも意味無いだろ。
ダバリード以外に行く」
涼は複雑な表情になった。
「自分を自慢しているのか卑下しているのか」
「事実を客観的に述べているだけだ。
私はさやかのおかげで、スタートラインがラッキーだったから今の地位に居る。
ごく普通に大学を出て就職をしていたら、変人扱いで、いいように低賃金で使われているだけだ。
私には上昇志向がないしね。
食うに困らなければ、そのままで一生を終えているだろう」
綺樹は窓の外を見たまま淡々と答えた。

