たっぷりとした沈黙に涼は成介を見上げた。 成介は冷ややかに見返した。 「知りませんよ」 「そうか」 成介は決裁の終わった書類をとり上げる。 「あなたが。 プロポーズを断わられたぐらいで傷心の旅に出るような、繊細な感情な持ち主なら、私は苦労していませんがね」 「まあな」 涼もにやっと笑った。 遊んだ女の数の多さで、かけた苦労を言っているのだと思った。 成介は無言で部屋を出て行った。