「ああ、そうだ」 横を歩く涼を見上げてにやっと笑った。 「今夜は駄目だぞ。 脱いだら最期。 私は自分で着られないから」 涼は肩をすくめた。 「それは残念」 他人事のような口調に綺樹はちょっと不審げに見上げた。 「ま、そういう日もあるさ。 浴衣姿を見られたからいいかな」 涼もにやっと笑い返すと、綺樹はにっこりとあどけない笑い顔になった。 「そうか」 記憶にある限り、初めてのその笑顔に胸が揺さぶられた。 かなり貴重だ。 でもそういう笑顔が出るほど、寝ることが負担なのも事実なのだ。