「なんだよそれ」
「精神安定剤だ」
綺樹は目を見開いた。
「おまえこそ何考えてんだよ」
叫ぶように言うと、フェリックスの瞳が怒りで光った。
逃げようとする綺樹の肩を押さえ込み、注射器の袋を口で破ってくわえ、片手で取り出す。
膝で綺樹の体を押さえ込むと、腕を掴み上げて注射の針を刺した。
「なに。
なにするんだ」
暴れているのだが、全くの非力だ。
綺樹がまた何か言おうと口を動かしたが言葉は出てこなかった。
急速にぐったりとしてくる。
瞬く間にまぶたが落ちた。
「本当に、全く、一体何を考えてるんだ。
この馬鹿が」
フェリックスは綺樹を見下ろしながら小さく叫ぶように呟いた。

