「あなた、たとえば自分のグラスが空いていると、落ち着かないでしょ。 もう飲まないとしても」 「まあ、そうだな」 「そういうこと」 かなり乱暴な説明で涼は締めくくった。 綺樹は呆れた顔をした。 「仕事で部下にそういう説明の仕方をしていないだろうな」 涼ははしで突き出しを口に運びながら、肩をすくめた。 視線の端に新しく入ってきた客が、カウンターにつくのが入る。 今夜は一番会いたくない相手だ。 向こうは気が付いて、手を上げて挨拶をよこした。 涼の視線に気が付いて綺樹がその先を辿る。