「おまえは何を飲むんだ?」 「冷酒」 この暑さと湿気にはとても惹かれるものがある。 が、日本酒は体質的にとても酔う。 「一杯だけ付き合う。 ワインも注文してくれ」 今日も自我が危うくなるほどは酔えない。 やってきた切子のお猪口とお銚子に入った冷酒は、とても涼やかだった。 綺樹が嬉しそうに目を輝かしている。 注いでやってから、少し持ち上げた。 「ようこそ日本へ」 涼の挨拶を無視して、綺樹はお猪口に口をつけて一気に飲み干した。 「うまい」 涼は笑った。